扁平足は本当に最近多いのか?
よく耳にする「自称扁平足」
「足を預かる専門家」として扁平足に関する考えを独断と偏見で述べていきますね。
まず最初に、こちらの画像をご覧ください。
(画像をクリックorタップすると拡大して見ることができます)
どれも当サイトを運営しているPlus-Rで使用している足の検査機材の一つで撮影した足の生データが記録されているフォルダのスクリーンショットです。
これらの画像を見るかぎり、扁平足が多いとはとても思えません。
世間一般で言う扁平足は
こういった土踏まずがない状態を想像すると思います。
※実際にこれを扁平足といいます。
無作為に選んだ連続した上記足のデータ1~3。同一人物の足が2枚とないデータ。その中で世間一般で言う扁平足のデータは足データ3の左下019にしか見当たりません。
これをもって「自称扁平足」を肯定していいのでしょうか?
メディアでも数年前から「扁平足増加のトピック」が増えています。
そこに「疑問を持って」「鵜呑みにせず」「真実を探る」をテーマに「Plus-Rの考え」でお伝えしていきます。
扁平足には種類がある。扁平足と外反扁平足
広い世界と比べるとごく狭い環境ではありますが、実際当施設にお見えになる方の中でも
「私の足は扁平足です」
と、自称扁平足の方は少なくありません。
ちなみに下記画像の方も『自称扁平足』の方です。
裸足の画像を見てみると、確かに青矢印部分の内側縦アーチが検査台のガラス面に触れているように見えます。
しかしこの足を検査にかけてみると結果は
となり、上記[1 世間一般の扁平足のイメージ]画像とはかなり違うことがわかります。
1で示した扁平足の写真と決定的に何が違うのかというと
「土踏まずがある」
ということです。
では2で示している自称扁平足の写真。
見た目では土踏まずがなさそうなのに検査をすると2-2のとおり土踏まずがります。(というより土踏まずがありすぎる=ハイアーチ)
世間一般で言う扁平足のイメージでいくと扁平足とは土踏まずがなくなっている状態のことを指しますが、これはどういったことでしょうか。
そこで2の写真、こちらを両足共に見てみましょう。
見てわかるように左足首が黒線で示す通り「くの字に変形(外反)」しています。
そのため内くるぶしがオレンジ色の矢印で示す下方向への力が働き、その結果、外見的に内側の土踏まずが潰れて扁平足に見える。
といったことがおきます。
これを「外反扁平」といいます。
この様に扁平足といっても
・土踏まずがなくなっている状態の扁平足
と
・足首の構造上の問題(若しくは腓骨筋腱の問題)で
扁平足に見える外反扁平足
の種類にわけられます。
扁平足には種類があるということを知っておき、世間一般でイメージする扁平足はさほど多くなく
実は扁平足だと思われている多くが
「外反扁平足」
の可能性があるということを知っておくべきです。
さて、上記写真に示した通り、外反扁平足になるとハイアーチになっていることが多くなります。
なぜハイアーチが多いのか?
前章では外反扁平足についての紹介と外反扁平足になるとハイアーチが多いということをご紹介させていただきました。
この章では、なぜハイアーチが多いのかという事象にフォーカスを合わせてみたいと思います。
著者は今まで延べ一万足以上のインソールを作ってきてそれに比例して多くの足もみてきました。そんな著者が感じることの中に
「足の幅に対して、メーカーの考えと実際の足の温度差」
があります。
日本の靴市場では
・2Eが標準の幅
・Eがスリム
・3Eがワイド
・4Eがスーパーワイド
といった売り方をしていることが多いです。
しかし著者自身が足のサイズを計測をしてみると世の中には足の幅が細い人がとても多い。
そしてそれは日本国内で数少ない足と靴の学会である
日本靴医学会、日本足の外科学会
などでは周知の事実です。
ようするに足と靴の専門家は現代人の足の幅は細い人が多いということを知っているということです。
実際どの程度の足の細さかというと、JISにおける靴のサイズ(JISS5037)規格で見てみると
例えば男性の場合は幅が細い方から広い方に向けて
A/B/C/D/E/2E/3E/4E/F/G
と幅のサイズがありますが、計測してみると市場でレギュラーとされている2EどころかCとかBなんて幅のひとがたくさんいます。
どうにかすると一番細い幅とされているAにも届かない細い足もちらほら目につきます。
実際は足の幅が細い人が沢山いるのにメーカーは幅が細い靴を作らない。
これが先に述べた
「足の幅に対して、メーカーの考えと実際の足の温度差」
です。
では、ここからがこの章の本題。なぜハイアーチが多いのかの一考。
前述のとおり、当施設にお見えになる方は足が幅が細い方が本当に多い。
足幅が細い方がジャストフィットの幅を選べず広い靴を選ばざるおえない市場の現状。加えて大きいサイズの靴を履いている方も多い。
例えば
ジャストフィット23.0cmの方が24.0cmとか大きい靴を履いていたとします。
となるとどうなるでしょうか。
靴の中で足が前後左右に暴れ、不安定になります。
暴れる、不安定になるとどうするか。
・脱げないように靴の中で足をグーにする
・安定感を獲得するために靴の中で足をグーにする
といったことがおこります。
例えばスリッパやサンダルなど、覆いのない靴や不安定な靴を履いた時に履物の中で足をグーにしたことがある経験に心あたりがある方もいると思います。
そもそもなぜ、足をグーに出来るのかというとそれは
『足をグーにする筋肉(足底筋)が活動(収縮)しているから』
です。
大きい靴や不安定な靴を履く
→安定感を得るためにグーにする
→グーにするたび足底筋が収縮
→それを繰り返していると・・・
ハイアーチの出来上がり。というわけです。
事実、当施設にいらした方の経過を追ってみると、もともとはハイアーチであったが適正なサイズの靴を履いて頂き、ちゃんとした靴の履き方を指導し、それを実践して頂き、それに対してインソールを作製しただけでアーチの形状が正常に回復した事例が幾つもあります。
要するにグーにする必要がなくなったので足底筋が過度に収縮する必要がなくなり、その結果アーチが正常になった。
といったところでしょうか。
足の幅が細くなると比例してかかとの幅も細くなってくる。幅の細さに加え、かかとの幅の細さも合わせてとても目につきます。
かかとの幅にJIS規格はありませんが、幅を持て余す靴を履いていてかかとがジャストフィットであるわけがありません。
かかとが不安定であれば足首にストレスを加えそれが足首の外反方向へのストレスを与えることも安易に想像ができます。
以上が著者の考える外反扁平の発生機序の中の一因に対する一考とハイアーチの一因に対する一考です。
実際の扁平足と扁平足のまとめ
最後にこの章では「実際の扁平足」について少しふれてみます。
ここまででは自称扁平足という方の中に
「本当に扁平足ですね」
ということは極めて稀で、実際には
・外反扁平足
・足が小さく、足が靴の中で暴れる(不安定)
・大きい靴を履いていて足が靴の中で暴れる(不安定)
それ故ハイアーチであることが多いということをお伝えしてきました。
しかしそんな自称扁平足という方の中にも
「本当に扁平足ですね」
という方もいるわけです。
The扁平足というのや
扁平足に加えて足のゆびの変形を伴うもの
さらには子どもの扁平足や
先述の踵が細い足の扁平足まで。
この様に正真正銘の扁平足は色々なタイプのものが存在します。
このようなThe扁平足というのは小児期であるのか、思春期であるのか、成人期であるのか。どのタイミングでの扁平足なのかでニュアンスが変わってくるのですが、(G.Hormann)
なんにしたって
「(本当の)扁平足でとても困った」
というのは少ないというのが実情です。(著者施設に限ってかも知れませんが…)
事実、上記扁平足の方々は扁平足に悩んでの来院ではなく他に悩みがあって、検査をしてみたら
「扁平足のようですね」
といった結果論のものがとても多いです。
さて、それではまとめです。
著者が「扁平足」について思うところ。それは
・実際に扁平足もいる
・ただ自称扁平足のほうが多い
・実際にはハイアーチのほうが多い
ということを知って欲しいんです。
で、だからどうした!となるかもしれませんが、だから何を言いたいかというと、
「餅は餅屋」
というだけあって自己判断とか感覚論ではなく、専門家にちゃんとみてもらうことが大事ですよ。
ということを言いたいんです。
今回の扁平足シリーズで伝えたい事はもちろん扁平足について知ってもらいたいということもありますが、実は私が今回扁平足を取り上げたのは、扁平足についてを知らせることだけが目的ではなく
扁平足を取り上げたのはあくまでも手段レベルであるということ。
では何を伝えることが目的であるかというと、先に述べたように自分で思っていることと実際にギャップがあることが多い。ということを知ってもらうことが本当の目的です。
・扁平足だと思っていたら実際はハイアーチだった
・私の足のサイズは●cmだと思っていたのに実際はそんなに大きくなかった
・このメーカーの靴がいいと思っていたけど実際は自分の足に合っていなかった
……などなど。
ですから足と体にお困りの方は
「足は足屋」
是非、1度専門家にちゃんとみてもらって下さいね。