靴ってなぁに?
まず、「靴」って何?と辞書で調べてみると・・・「足を包む履物の一種」などと出てきますが、当院では「装具」の一種。と解釈しています。では「装具」って何?と調べてみると・・・
「機能に障害のある体幹・四肢に装着する器具」などと出てきます。
ようするに、腰が痛いからするコルセットとか、足がないからつける義足とか、目が悪いからする眼鏡などのように、痛くて裸足では歩けないから履く靴。
この様に靴のことを当院ではとらえています。
ここで大切なこと。それは装具は「大は小を兼ねない」ということです。
例えば体がものすごく大きい人がコルセットをしているとします。
そしてその人が「このコルセット、凄く良いから試しに着けてごらん」とものすごくスリムな人に貸してあげるとします。するとどうなるかというと・・・
合うわけがありません。だから良さもわかりません。
他にも眼鏡。度がきつければきついほど良く見えるかというと・・・
見えるわけがありません。そんな眼鏡をしていると、余計目が悪くなってしまいます。
この様に装具は「大は小を兼ねない」んです。
靴だって大きなものを選ぶことによって生じる「デメリット」がたくさんあるんです。
靴の種類
一括りに靴と言っても様々な種類があります。
スニーカー |
ウォーキングシューズ |
ランニングシューズ |
レーシングシューズ |
スリッポン |
プレーンパンプス |
パンプス (フロントストラップ) |
パンプス (フロントストラップ) |
サンダル |
調整具の種類
競技用や介護靴などもありますが、上記のように靴の種類を細く分けるときりがありません。
次は「調整具」というものにフォーカスして種類分けをしてみたいと思います。
紐靴 |
紐+ファスナー |
マジックテープ |
フロントストラップ (足の甲で止める) |
バックストラップ (踵の後で止める) |
調整具なし |
調整具にはなんで種類が色いろあるの??
ではなぜ、この様に多種あるのかというと・・・ひとつはもちろんその靴にあったデザインというのがあります。
やはり靴もアパレルですから、例えばハイヒールでファスナーやマジックテープといったものはいかがなものでしょう!?デザイン的に?となってしまいます。
やはり靴にあったデザインでカッコよかったりかわいい靴を履きたいですよね。
しかし、デザインも大事ですが、やはり根本には「調整する」という大事な役割があります。
では調整をする際に調整具の違いでどのような差が出てくるのかというと、靴を履いた時の安定感でイメージするとわかりやすいと思います。
サンダルやミュールよりもプレーンパンプスのほうがかかとが安定しているので安全面などを含めた機能的には優れいています。
かかとが高いプレーンパンプスよりもスリッポン(ローファータイプ)のほうが、ヒールがない分(かかとが低いぶん)さらにかかとが安定します。
調整具が何もないスリッポンよりもマジックテープやベルトなどの調整具つきのほうが、靴の中で足全体が遊びにくくなる(暴れにくくなる)ので、安定性が増します。
マジックテープやベルトなどの調整具つきよりも、靴ひも付きのほうが細やかな調整ができるようになるため、より安定性が増します。
といった具合です。
となると、紐靴が一番いいということになるのですが、これもケースバイケースです。
たとえば小学校高学年くらいになってくると、紐をちゃんと蝶結び出来る子も増えてきますが、それよりも若年層になってくると蝶結びができない子どもが一般的と思います。
ですからそういった子どもたちにはマジックテープの方が調整はしやすいです。
これがキッズシューズに紐靴が少なくてマジックテープが多い理由です。
徹底図解。靴の構造。
では次に靴の解剖学です。
靴は一本の木を削って削って・・・そして最終的に靴になる。というわけではなく、様々な部品を貼って塗ってくっつけて・・・こうして靴が出来上がります。その部品ひとつひとつに意味があるんですが、今回はちょっと部品の紹介と機能を説明してみたいと思います。
①調整具(この場合シューレース=靴ひもです。足を固定します) ②アッパー(足の甲を覆う部分です。足の甲を保護します) ③先芯(靴のラインを保ったり足先を保護するものです) ④ベロ(調整具などのストレスから足の甲を保護します) ⑤履き口(足を靴に入れる部分です) |
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⑥カウンター(かかとを安定させます) ⑦中底(ミッドソール。上には中敷きが乗ります) |
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⑧シャンク(足のゆびの曲がり位置を決めます) ⑨本底(アウトソール。地面などからのストレスから靴を保護します) ⑩中敷き(インソール。靴のストレスから足裏を保護します) |
靴の解剖をざっと言うとこんな感じです。いろんな部品があるでしょ!?
シャンク1
解剖もできたことですので、その中でも当施設で重点を置いている部品、「シャンク」について説明したいと思います。
シャンクとは靴の曲がり位置を決めるものなんですが、具体的な場所は・・・
靴底からベージュ・青・白・踵の部分を切ってある厚紙と、 |
革靴だとシャンクには |
このシャンクの先端(つま先側)が曲がるように設計されています。
そして機能としては、足の曲がり位置を決めるというものなんですが、詳しく説明すると・・・
人間の足があります。 | |
そして歩いている時のワンシーン。 足の裏全体が地面にくっつきます。 |
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次にかかとを持ち上げて、ゆびで地面を蹴飛ばす準備をします。この時、左の写真のオレンジ色の部分(ゆびの付け根)が曲がる(反る)のですが、この曲がり位置を靴でも合わせてあげる。これがシャンクの役割です。 |
シャンク2
今度はシャンクの実例を紹介したいと思います。
まずここに、2種類の違う靴があります。
しかしこの2種類にはシャンクが「ある」「ない」の決定的な差があります。
(白い靴にはシャンクがあって、黒い靴にはシャンクがない)
前回説明したようにシャンクには、ゆびの付け根の関節の曲がり位置を靴でも作ってあげるという役割があります。
白い靴の曲がり位置はこんな感じ。
中から見るとこうなっています。
ちょうどシャンクの先端が曲がっているのがわかります。
しかし、シャンクがない黒い靴はこのように曲がります。
中から見ると・・・
土踏まずのあたりがぐにゃっと曲がっています。この靴に足が入るとどうなるのかというと・・・
白い靴ではゆびの付け根と靴の曲がり位置が合いますが、
黒い靴ではゆびの曲がり位置と靴の曲がり位置が合いません。
ここで体にはどういった影響が出てくるかというと、単純に黒い靴は履いていてとても疲れやすいです。ですから靴を購入するときは一度、靴を曲げてみて
「どのあたりが曲がるのかな?」
「曲がりやすいかな?曲がりにくいかな?」
というのを見てみるといいと思います。(あまりやりすぎるとお店の人に怒られちゃいます・・・)
ヒールカウンター
最後に⑥ヒールカウンターについて。先に説明した通り、ヒールカウンターという部品は「かかとの安定性」を得るための部品なんですが、このヒールカウンターにも「硬い」「柔らかい」「ある」「ない」などの差が靴によってあります。
先に登場したこちらの2種類の靴。
白い靴のかかとをこのようにギュッと押さえてみると・・・
とても硬いです。
黒い靴も同様にかかとをギュッと押さえてみると・・・
フニャフニャで簡単に潰れてしまいます。
ここで生じる白い靴と黒い靴の差は・・・白い靴のほうがヒールカウンターがしっかりとあって硬いので、かかとが安定するということです。
黒い靴はヒールカウンターがなくて柔らかいので、かかとが安定しにくく、人によっては捻挫のリスクファクターとなりえます。
子どもの頃よく、「靴のかかとは踏んじゃダメ!!」なんて怒られましたが、踏むことによって、せっかく硬いヒールカウンターが柔らかくなってしまっ たり、ヒールカウンターが変形して、変な形にかかとを安定させてしまう事になってしまわないように。
そういった意味が込められていたんです。
靴のことをざっと説明するとこんな感じです。意外と奥深いでしょ!?
たかが靴でもされど靴。毎日体を預ける大事な土台の部分なんだから大切に考えたいですね♪
大切にしてあげられたら、当然体にもいいこと盛りだくさんですよ♪